私は少子高齢化が急速に進展しつつある日本の将来を危惧するものです。大学院生やポスドクとして進化遺伝学研究者としてのトレーニングを受けてきましたが、いろいろな事情があり、近年は高齢者施設での介護職員や訪問介護ヘルパーとして勤務してまいりました。実際に介護の現場でこれまで働いてまいりましたが、ますます高齢化が進展するであろう我が国の将来に対する危惧の念は深まるばかりです。そこで今年(2017年)、私の専門的バックグラウンドである進化遺伝学的な観点から、年老いた親を介護するという人間の性質、行動を考察し、論文としてまとめ雑誌に投稿させていただきました(Miyo, T. 2017. Why do we care for old parents? Evolutionary genetic model of elderly caring. Open Journal of Genetics, 7, 20-39)。
人間集団の将来を考えるときに、進化遺伝学という枠組みは不可欠であると思います。なぜならば、未来は過去から現在までのプロセスの延長線上にあるものであり、そのプロセスは進化という観点に照らしてもっとも良く理解されるものであると考えるためです。少子化や高齢者介護などのいわゆる深刻な社会的問題は、当然我々日本人集団の将来に対して大きな影響を及ぼすでしょうが、これらの深刻な社会的問題を進化遺伝学の枠組みを用いて考える学問的領域は、残念ながら全くと言ってよいほどありませんでした。これは上述の論文を投稿する際に、適当な雑誌を見つけることができず、どの雑誌に投稿するかで非常に苦労したことからもうかがうことができると思います。
上述のような理由から、私は少子高齢化や高齢者介護などの深刻な社会的問題と進化科学との境界的な領域を見出したいと思いいたりました。そこで、高齢者介護という社会的問題が日本人集団の将来にどのような進化的影響を与えるか、少子高齢化の進化的影響、日本人集団の将来、進化などに興味(危惧?)を持たれている方々とコミュニケーションしたいと考え、インターネットにはあまり詳しくない、むしろメカは苦手なオールド・スクールにもかかわらず、このホームページを作った次第です。介護や福祉、社会学などを専門的に研究されている方々はもちろんですが、実際に家族介護を担っていらっしゃる方々、高齢者施設の介護職員や訪問介護ヘルパーの皆様など、様々なバックグラウンドを持たれている方々と、いろいろと議論できることを期待しております。私自身、まだまだ勉強が足りず、勉学に励む毎日であり、至らないところも多々あるとは思いますが、次の世代に寄与できるような有意義な議論ができるよう努めてまいりたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。
2017年11月20日
三代 隆洋
博士(生物科学)、介護支援専門員、精神保健福祉士、介護福祉士