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高校中退

高校中退

 

 寮に入っていた頃は学校の勉強など全くやらず、すっかり落ちこぼれてしまいましたが、実家に戻ってからは、さすがにこのままではマズイと思い、テスト勉強など多少は力を入れてやったと思います。それとともに、バス停の混雑を避けるために、さらに早起きして学校に通うようになると、通学することがだんだんと困難になっていきました。睡眠不足のようなこともあったのかもしれません。帰りの電車でウトウトしてしまい、疲れて眠りたいのに、夜なかなか眠れなくなっていました。

 

 退寮してから結局1年半通いましたが、高校3年になった4月に退学することになりました。高校に行くことがとても苦しくなり、なんのために高校に行っているのかわからなくなっていました。でもそうかと言って、高校を辞めてどうなるのか、はっきりとした自信も持つこともできませんでした。高校を辞めるのか、通い続けるのか、どっちにしても未来を思い描くことができず、身動きが取れなくなっていました。

 

 なんで知り合うようになったのか全く覚えていないのですが、私が1年の時に高校を退職された国語の先生に、高校中退の件について相談したことがあります。私がイメージする当時のW大生の典型をいくような、下駄を履いて手拭いを腰にぶら下げているような、バンカラな雰囲気のある先生でした。その先生の下宿にお邪魔し、高校を中退すべきかどうか、話を聞かせていただきました。高校を退職されて1年近くたっていたと思いますが、下宿は四畳半の、本当に何もない部屋で、黒の固定電話がポツンとあったのが印象に残っています。晩御飯をご馳走してくださったのですが、一人用の炊飯器で作った炊き込みごはんをいただきました。もちろんおかずはありません。その先生からは「余裕がある方に進んだほうがいい」との助言をいただきましたが、何もない部屋の中や、おかずのない炊き込みごはんだけの晩御飯も含めて、レールを外れて生きていくことの厳しさを教えてくれていたのかもしれません。どっちにするか自分の中では決められずに思い悩みましたが、先生の助言もあり、結局高校に通い続けることに一度は決心しました。しかし次の日また通学のために満員電車に乗っていると、気分が悪くなってきて、吐き気をどうにも抑えられなくなってしまいました。私はこれまで、乗り物に酔ったことは一度もありません。なので、電車で酔ったわけではないと思います。でもこの時は電車に乗っていられなくなり、途中の駅で電車から降りざるを得なくなってしまいました。吐き気を抑えるために駅のベンチに座りながら退学を決意しました。諦めがついたというか、まあ自分の中で退学することに納得できたのだろうと思います。