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高校中退と親の反応

高校中退と親の反応

 

 100%とは言えないまでも、それに近いくらいの高校進学率を誇る現在の日本において、子供から「高校をやめたい」と言われる親の気持ちはどのようなものなのでしょうか。「せめて高校くらい」と思う親の気持ちは、50歳を過ぎた今では、とてもよく理解することができるように思います。別に何もしなくても、あと1年間ただ通学していれば卒業できるのだから、何も退学などしなくてもいいのではないか、多分私の両親はそう言ってくれたのではなかったかとは思うのですが、如何せん、今から30年以上前の話なので、高校を辞めるかどうか悩んでいたときに、両親とどういう話をしたのか、正直はっきりとは覚えていません。

 

 結局、大検に合格し、大学にも無事に入学することができたのですが、私は大学2年の時に、一般教養課程で「社会調査セミナー」というセミナーを受講しました。そのセミナーは、学生が興味を持った社会問題について調べ、セミナーの担当教授から指導を受けながら、実際に自分の足を使ってインタビューやアンケートなどを行い、1年間かけてレポートにまとめていくという、一般教養課程2年次のセミナーにしては、かなりハードなセミナーでした。私はこのセミナーで、高校中退と大検について、自分の体験を交えながら、レポートにまとめました。そのレポートが今も手元にあるのですが、そのレポートの中で、私の両親とのやりとりについて記述しているところがあります。それによりますと、父親にはやっぱり反対されていたようです。レポートからそのまま引用すると、

 

親父に相談した時は、反対されてしまった。後できいた話であるが「子供がやめようとしているのをふみとどまらせるのが親のつとめだろう。」と母親にいったそうである。結局高校を辞めてしまったのであるけれども、親父が最後に、「辞めようが何をしようがお前の勝手だろうが、失敗しても人のせいにだけはするな。」と言った。

 

 高校を辞めてから、大検に合格し大学に無事合格するまでのおよそ1年間、父親はまったく口をきいてくれませんでした。何事も自分の責任でやれということだったのだろうと思います。私も父親を避けていました。そして母親も、私の人生を迷わせてしまったのではないかと泣きながら謝ってくれたことを覚えています。しかし私自身は、たとえ高校を中退するとしても、それによって自分の人生を諦めるつもりはまったくありませんでした。もともと高校中退することについてはおぼろげながらも感じてはいましたが、しかしいざとなると、なかなか踏ん切りがつかず、どうしたらいいかとても迷いはしました。でも大学で勉強したいという気持ちはずっと持っていましたし、高校を中退したとしても、TBSドラマのように東大とまでは言わないまでも、自分が志望する大学にいくという希望はいつも持っていました。そして、それを実現する自信も、正直ありました。辞めるか辞めないかというところではとても迷いましたが、辞めてしまってからは、決して開き直ったということではなく、自信を持って自宅で自分なりに勉強を進めていきました。私が退学することにした時には、両親も、私の将来を悲観して絶望的になったのではないかと思います。でも、高校を中退しても、ちゃんと大学に進学するという私の言うことを信用してくれていたのだと思います。一応反対はされましたが、それ以上は強く反対することなく高校中退を許してくれ、以後は何も言わず静かに見守ってくれていた両親には感謝しています。