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大学入学資格検定試験(大検)

大学入学資格検定試験(大検)

 

 大学に進学するためには、高校を卒業しなければならないと思っている人が多いのではないかと思いますが、必ずしもそういうわけではありません。私が大検のことを知るようになったのは、恐らく先に述べたTBSドラマの影響だったのではないかと思います。私の場合と同じように、このドラマのおかげで大検という制度の存在を知った人も多かったのではないかと思いますが、このドラマが放映されてからすでに30年以上経過してしまっている今、この制度を知らない人も増えてきているのではないかと思います。現在では名称も「高校卒業程度認定試験」と改められ、私が受検したときとは受検資格や試験科目数、試験期間などの制度の内容も一部改正されているようです。この大検制度は、あのTBSドラマが放映されていた、私が高校生であった1980年代から始まったわけではありません。戦前の旧学校制度のもとでも行われていました。しかしこの制度が始められた当時は、向学心があるにもかかわらず、経済的な理由や健康上の問題などのために高校を卒業できなかった人や進学できなかった人といった、特に勤労青少年のための救済制度としての側面が強かったようです。私たちが高校生であった時には、いきすぎた校則や体罰といった学校による管理教育が社会問題となり、高校中退者の数が増加していた時でした。また現在では、いじめの問題や生徒の不登校が深刻な問題となっているように思います。大検制度は日本において戦前から続く長い歴史を持っていますが、この制度を利用する理由は時代とともに移り変わっているようです。

 

 大検を受験する理由は様々あると思いますが、参考のために、私と同じ高校に通っていた奴のことをここで述べさせてもらおうと思います。偶然と一言で片付けてしまうには、あまりにももったいないのですが、私は大検の試験会場で同じT高校の生徒と偶然にも出くわしました。そんなことあるのかと思うのですが、とても不思議な気分になります。別のクラスの生徒で、友人と言えるほど仲がよくもなかったのですが、しかしお互いの存在については知っているといった程度の関係でした。何よりも、とてもできる奴で、1学年1000人近くいる生徒の中で、テストではいつもトップクラスだった奴です。なんでこいつがここにいるのか? 私は高校が嫌で中退しましたが、そいつも学校が嫌になって退学したのか? などといろいろ詮索したのですが、そいつの場合は、私のように学校が嫌になって中退したという理由ではなかったようです。親が他県へ転勤することになったそうなのですが、引越しした先の近くの学校に転校したものの、学校の授業の進み具合がT高校とはちがっていて、単位がそろわず留年しなければならなかったということでした。留年するくらいならばと、結局高校を中退することに決め、大検から大学進学を目指すことにしたとのことでした。親が引越しをするとしても、そのままあと一年間T高校に通っていれば、彼であればいきたい大学にはどこにでも行けただろうと思います。そのままT高校に在学し続けたかったならば、寮に入るという手があったはずなのですが、寮だけは絶対嫌だったといっていました。残念ですが、その後彼がどうなったのか、消息は不明です。この彼のように、必ずしも学校が嫌だったというわけではなく、親の都合で転校を余儀なくされ、その結果単位がそろわず留年しなければならないという理由で退学し、大検を受けるという人もいました。