アメリカの大学院留学の準備 (1) アプリケーション・フォーム、TOEFL

アメリカの大学院留学の準備

 

 現在の日本の大学院の入試がどのような形で行われているのか、詳しいことはちょっとわかりませんが、私が千葉大学や筑波大学の大学院を受験した1990年代の日本の大学院の場合には、まず入りたい研究室の教授と、どのような研究をしたいのかといった希望や、どのようなことができるのかといったことについて相談し、大学入試の時と同じように、主に英語や専門科目からなる大学院の入学試験を受け、さらに面接を受けて、それらの結果に基づいて合否が決まっていたのではなかったかと思います。もちろん、研究室の定員などの状況もあるでしょうから、一概に点数だけで決まっていたとは思いませんが、それでも千葉大学なら千葉大学の、筑波大学なら筑波大学の過去の大学院試験問題を学校から送ってもらったり、先輩から入手したりして、受験勉強を一応はしていました。日本の大学院入試の場合、学科の試験や面接などの結果が大きな比重を占めていたのではないかと思います。アメリカの大学院の場合、日本の入学者選抜の方法とはかなり異なります。特に、日本などからの留学生にとっては、多くの手続きが必要になりました。

 

私が大学生だった1990年ごろはバブル景気真っ只中で、『地球の歩き方』というガイドブックとともに、海外旅行がとても身近なものとなり、もちろん憧れ的なところが大きかったのでしょうが、アメリカをはじめ海外に行くことがそれほど特別なことではなくなりつつあった頃だったと思います。実際に私は、大学1年の時には友人と二人で、格安航空券を使って、アメリカの西海岸を旅行しましたし、大学の2年の時には、アメリカのロス・アンジェルスからメキシコのシティーまで、長距離バスを使って、1ヶ月かけて旅行したりしていました。このように、海外はとても身近な存在になりつつあったのですが、それでも私がアメリカに留学する準備をしていた1990年代は、まだコンピューターもそれほど発達しておらず、現在のようにインターネットやSNSで簡単に世界中の人々とつながることができるといった状況ではなく、基本的に、アメリカの大学院とのやりとりは手紙によるものでした。もちろん、手紙も英文で作成しなければなりません。こちらから手紙を送っても、返事が返ってくるまでに結構な日数がかかってしまうので、忍耐力が必要になりました。

 

アメリカの大学院に留学する場合に、当時においても手続きを代行してくれる業者があったと思いますが、私は千葉大学大学院で研究をしながら、自分で大学院留学の手続きを行いました。なので、正直な感想としては、時間もかかるし、応募書類を揃えるだけでも結構大変であり、嫌になってしまうことも多かったと思います。現在はインターネットも普及し、当時とはいろいろと進歩したところがあるかもしれませんが、それでもそれほど変わっていないところもあるとは思いますので、アメリカの大学院に留学した時の体験を手短にですがまとめておきたいと思います。

 

アプリケーション・フォーム

これは私の場合ですが、千葉大学大学院に在学していたときに、まず、図書館で関連する学術雑誌をめくりながら、興味のありそうな研究をやっている研究者の大学や学部を調べ、論文に載っている研究者の大学の住所に手紙を送り、日本の募集要項・入学願書に当たるアプリケーション・フォームを送ってもらうように手配しました。あと、アメリカ留学を斡旋していた団体が出していたアメリカ留学に関する雑誌なんかも参考にしたと思います。このようにして調べた、ここはと思ういくつかの大学に手紙を送り、アプリケーション・フォームを送ってもらいました。もちろんアプリケーション・フォームは全て英語で書かれており、さらにこれを英語で完成させなければなりません。今のように、コンピューターでPDFファイルやWordファイルに直接記入などできませんでしたので、研究室にあったタイプライターを使って、カチャカチャと文字を打ち込まなければなりませんでした。例えば、自分の出身小学校や中学校のことについて記入しなければならない場合などがあり、それらについても、当然すべて英語で記入しなければならず、地元の教育委員会に、小学校や中学校の正式な英語名を問い合わせなければならないなど、これが結構面倒な作業でした。

 

TOEFL

このように、アプリケーション・フォームを完成させるだけでも結構大変だったので、これを完成させただけで、もう安心してしまい合格した気になってしまったのですが、そんなことはありませんでした。当時、アメリカの大学では、日本人留学生はほとんど喋らないなど、あまり評判が良くないようでしたが、留学生として、まずアメリカの大学や大学院で授業についていけるだけの英語力を持っていることを証明しなければなりません。それには、英語を母国語としない人々の英語力を評価するTOEFLという英語検定のようなテストの点数が一般に用いられていました。例えば、ハーバード大学などのようなトップ校や、英文学などの高いレベルの英語力を必要とする学科の場合には、TOEFLでかなりの高得点を要求される場合もあるでしょうが、私の場合のように、理系の一般的な大学院の場合には、当時550点を要求されることが多かったように思います。千葉大大学院在籍中も何度かTOEFLを受けましたが、普段から英語を聞いたりして勉強していなかったので、無残な点数しか取れませんでした。