発表した論文の要旨
日中は、およそ800匹のショウジョウバエが飛び回っていた集団飼育箱から、毎日のように、ハエの死体を拾い集め、カウントするという仕事をしながら、その一方で、主に夜間や休日に、殺虫剤抵抗性の遺伝的変異のダイナミクスに関する集団モデルを用いた分析の準備も、着々と進めていました。エジンバラ大学で研究していた1年目に発表した殺虫剤抵抗性に関する論文の要旨は、以下の通りです。
キイロショウジョウバエにおける有機リン剤に対する抵抗性と感受性の染色体置換系統間での内的自然増加率の比較
Takahiro Miyo, Yuzuru Oguma, and Brian Charlesworth
Genes & Genetic Systems (2003) 78(5): 373-382.
要旨
キイロショウジョウバエのある自然集団において観察された3つの有機リン剤に対する抵抗性の季節的変動の遺伝的基礎を調べるために、我々は、この集団から得た抵抗性系統と感受性系統に由来する染色体置換系統の間で、内的自然増加率、世代時間、純繁殖率を比較した。染色体置換系統の間には、有意な変異が存在した。3つの有機リン剤に対する抵抗性を与える、抵抗性系統からの第3染色体を保有する置換系統は、一般に、これらの適応度尺度のより低い平均値を示した。染色体分析もまた、抵抗性系統からの第3染色体の有意なネガティブな寄与を示した。しかしながら、これらの適応度尺度に対する抵抗性系統からの染色体の間の相互作用の有意なポジティブな寄与もまた検出された。我々はさらに、それぞれの染色体置換系統が初期の感受性集団に低頻度で導入されると仮定したローカル・スタビリティー分析を行った。第3染色体上の抵抗性因子は、密度非依存的条件および幼若期の密度調節条件の両方のもとで、その頻度を減少させる傾向にあることが明らかにされた。これらの結果に基づいて、この自然集団で観察された3つの有機リン剤に対する抵抗性の季節的変動についての可能な説明を提起した。
KEY WORDS: キイロショウジョウバエ、殺虫剤抵抗性、内的自然増加率、自然集団