投稿した論文の要旨
それぞれの染色体置換系統について得られていた産仔生産力と生存率についてのデータ・セットから、上で概略を述べたような手順を踏んで、集団が増加している過程における抵抗性遺伝子の動態についての洞察を得ました。この場合、すべての染色体が感受性系統に由来する感受性型の染色体置換系統に対する、他の染色体置換系統の個体数の比の変遷として検討が加えられています。なので、それぞれの系統が増加しつつある中で、有機リン剤に対する抵抗性系統の第3染色体を保有している、抵抗性型の染色体置換系統の個体数の相対的な比が減少していく過程を、視覚的に、より直感的に示すことができたのではないかと思います。
ここまでの結果についてまとめた論文の要旨は、以下のようになります。原文は英語ですが、日本語に翻訳してあります。
キイロショウジョウバエにおける有機リン剤に対して抵抗性と感受性の染色体置換系統の密度非依存的な集団の遷移軌道
Takahiro Miyo and Brian Charlesworth
BMC Genetics (2004) 5: 31.
要旨
バックグラウンド: 有機リン剤に対する感受性の季節的変動が、連続した2年間にわたって、キイロショウジョウバエ勝沼集団において観察された。3つの有機リン剤に対する感受性は秋に増加する傾向を示した。抵抗性の遺伝子型と感受性の遺伝子型との間の適応度における変異が、秋集団における遺伝的構成の変化を引き起こしうるという仮説を検討するために、我々は3つの有機リン剤に対して抵抗性と感受性の染色体置換系統の特徴を持つ1個体の成虫雌から始まる密度非依存的な集団の遷移軌道を調べた。
結果: すべての染色体が感受性系統に由来するSSS系統のものに対するそれぞれの染色体置換系統の数の比として表された密度非依存的な集団の遷移軌道は、すべての抵抗性の染色体置換系統について、時間とともに数の有意な減少が示された。
結論: 抵抗性の染色体置換系統の密度非依存的な集団の遷移軌道における減少傾向は、秋に勝沼集団で観察された3つの有機リン剤に対する抵抗性レベルが同時に減少したことを説明することができるだろう。