キイロショウジョウバエ勝沼集団の変異(1)

キイロショウジョウバエ勝沼集団の変異

 

 大学院生が行った抵抗性系統と感受性系統のアセチルコリンエステラーゼの塩基配列の分析から、勝沼のキイロショウジョウバエ自然集団には、有機リン剤抵抗性に寄与すると報告されているアミノ酸置換突然変異が、重要とされていた3つのアミノ酸サイトで起こっていることが明らかにされました。この知見に基づいて、この特異的な3つのアミノ酸サイトそれぞれにおける変異の有無を、できるだけコストをかけずに簡便に判別するための、対立遺伝子特異的PCRに用いるプライマーを設計し、PCRの条件設定をこれまでの数か月の間行ってきました。この対立遺伝子特異的PCRのテクニックを使って、実際にこれらの点突然変異を検出できるかどうかを、他の抵抗性系統を用いて検討し、抵抗性型の点突然変異をなんとか簡便に検出できそうだという段階に至ったので、実際に用いることができるテクニックとして、この対立遺伝子特異的PCR法を実際に用いて、次の研究のステージに進むことにしました。

 

 このような簡便な方法が使えるようになると、例えば、個体が抵抗性型の変異を保有しているかどうかや、その個体の遺伝子型がわかるようになり、その結果として有機リン剤に対して抵抗性であるかどうかが、PCRによるDNAの増幅の有無で判別できる可能性がでてきます。ですが、そのまえに、これまで私や大学院生が分析に用いてきた抵抗性系統や感受性系統は、私が大学院生時代に作製したものであり、まあ私が研究室で殺虫剤抵抗性の研究をするまで、殺虫剤抵抗性の系統など研究室の中で扱うこともなかったでしょうから、検出されたこれらの抵抗性型の変異が、実験室で飼育されていた他の系統からの誤った混入であるなどという人はまずいなかっただろうとは思いますが、一応念のために、新たに勝沼からショウジョウバエの自然集団を採集し、大学院生が検出したこれらの点突然変異が実際に、勝沼のキイロショウジョウバエ自然集団の中に存在しているものであることを確かめてみることにしました。勝沼で採集を行ったのは、真夏の暑い盛りであった2006年の8月でしたが、あまり個体数も得られなかったので、2回ほど採集を行うことになりました。