新たに勝沼でショウジョウバエを採集
私はこれまで殺虫剤抵抗性を研究してきましたが、その興味の中心にあったことというのは、やはり、キイロショウジョウバエ自然集団における殺虫剤抵抗性の遺伝的変異のダイナミクスということになるのだろうと思います。実験室の中で、PCRのような、遺伝子をいじくりまわすような実験を夢中になって行ってきましたが、それもやはり自然集団における遺伝的変異の変動を分析するための、あくまでも手段として行ってきたのであり、遺伝子を扱う分析そのものが目的だったわけではありません。なので、やはり勝沼での自然集団の採集が、私にとっては基本的な部分になるのだろうと思います。
勝沼で実際に採集を行うのは、とても久しぶりだったと思います。懐かしくもあったのですが、でも高速バスの運行状況が変わってしまっていたのか、何かの事情があったのか、よく覚えていないのですが、これまでいつも使っていた高速バスの停留所ではなく、そこからちょっと離れた停留所を使わなければなりませんでした。真夏の暑い盛りだったので、停留所を往復するだけで大量の汗をかいてしまい、バテバテになってしまった記憶があります。温暖化の影響があったかどうか、何とも言えませんが、とても暑かったという記憶があり、実際に採集できたショウジョウバエの個体数もわずかでした。勝沼はショウジョウバエの採集地として有名であり、日本の中でもショウジョウバエを採集することができる有数の場所だと思いますが、近年の気候変動の影響が危惧されるところだろうと思います。
実験室に戻り、お決まりのようにキイロショウジョウバエの種の同定を行い、1雌由来系統を作製しました。真夏の、まだまだ暑い盛りだったので、あまりショウジョウバエを採集できませんでしたが、それでも数系統1雌由来系統を作製することができました。これらの、新たに採集した自然集団に由来する1雌由来系統を使って、実際に対立遺伝子特異的PCRを行い、有機リン剤抵抗性に特に寄与しているとされる3つのアミノ酸サイトにおいて、抵抗性型の点突然変異が、実際の野外集団に存在しているか否か検討を加えてみました。