投稿論文の要旨
エジンバラから帰国し、大学院時代にお世話になっていた指導教官が定年のため退官されるまでの1年間に行った、特に対立遺伝子特異的PCR実験の結果をまとめて論文として発表しました。主に2006年に実験を行っていましたが、実際には実家でまとめることになってしまい、2010年に発表された論文です。フェローシップを取ろうとしていろいろと応募してみたりしたのですが、うまくいきませんでした。結局、今後行おうと計画していた実験を実際に行う目途が立たず、やむを得ず得られている結果だけをまとめることにしたのでした。原文は英文ですが、日本語に翻訳してあります。
キイロショウジョウバエ自然集団における有機リン剤に対する感受性の遺伝的変異へのアセチルコリンエステラーゼの3つのサイトの突然変異とチトクロームP450の寄与
Takahiro Miyo and Yuzuru Oguma
Population Ecology (2010) 52: 159-169.
要旨
本研究において、我々は、キイロショウジョウバエの勝沼集団において有機リン剤に対する抵抗性を与える2つの抵抗性因子を明らかにしようと試みた。そのうちの1つは第2染色体上にマッピングされ、他方は第3染色体上にマッピングされている。第2染色体因子に関しては、我々は、ltdとvgの間で組換えを起している54の組換え近交系統のマラチオンに対する感受性をテストした。分散分析(ANOVA)は、組換え系統の間におけるマラチオンに対する感受性の高度に有意な変異を明らかにした。加えて、マラチオンに対する第2染色体抵抗性系統の感受性は、ピペロニル・ブトキシドの付加的な施用とともに増大した。これは、ltdとvgの間に位置するCyp遺伝子ファミリーのメンバーの1つであることを示唆している。第3染色体因子に関しては、我々は、勝沼集団における有機リン剤抵抗性への変異型アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の寄与を評価するために、フェニトロオクソンとカーバリルに関するAChEの阻害アッセイを行った。この集団から分離された抵抗性系統のI50値は、感受性系統のものよりも、フェニトロオクソンについてはおよそ15倍、カーバリルについてはおよそ2倍高かった。これは、勝沼集団における有機リン剤抵抗性に変異型AChEが寄与していることを示唆している。我々はさらに、対立遺伝子特異的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アプローチを用いることによって、新たに採集した勝沼集団内におけるアセチルコリンエステラーゼ(Ace)遺伝子の遺伝的変異を調べた。この集団内には、有機リン剤やカーバメイト剤に対するAChEの感受性を変更するうえで重要な役割を果たしているAce遺伝子の3つのサイトにおける抵抗性型の突然変異が高頻度で存在することを明らかにした。
KEYWORDS: アセチルコリンエステラーゼ、対立遺伝子特異的PCR、チトクロームP450、密度非依存性、キイロショウジョウバエ、殺虫剤抵抗性