台湾での研究プロジェクト
他の先生方のプロジェクトに参加させていただき、そのプロジェクトについて、すでに部外者になってしまっている私が、現在いろいろと述べることは倫理的にも問題があるでしょうし、私自身正直なところ、10年以上前に行っていた、よそ様の研究プロジェクトについて、何をやっていたのかほとんど覚えていないので、台湾でどのような研究プロジェクトに関わらせていただいていたかを、ここで述べることは控えたいと思います。ただ、台湾に渡ってから、結構早い段階で、あなたとは一緒に論文を書くことはないと言われ、あなたの仕事は、系統などの実験の材料を作製し、実験の下準備を整えておくことだと、雇用主の先生から直接言われました。まあ、私も未熟な修行者でしたし、先生が言った言葉の真意を、今でも推し量りかねていますが、私も一応研究者の端くれのつもりでいたので、論文を書けないと言われた以上、ここ(台湾)に長居することもないことを悟り、また次のポジションを探しながら、とりあえず契約の期限が来るまでは、与えられたデューティーを果たしていくことに専心することにしました。
よそ様の研究プロジェクトに関わらせていただくとともに、日本から持ち込んだ、私が自宅で悪戦苦闘しながら維持してきた、筑波大学で用いてきたショウジョウバエの系統を維持するために、餌を分けていただいていました。系統を維持する場合には、絶やさないようにするために、大抵、系統の複製をつくり、1つの系統について、2~3本にして維持しているので、トータルすると結構な量の餌が必要になります。私が日本から持ち込んだこれらの系統は、台湾でのプロジェクトとは関わりがなかったのですが、それにもかかわらず、餌を分けてくださっていたので、当然のことながら、そのお返しとして、自分が使った分の瓶洗いをさせていただくとともに、餌づくりには私も加わらせていただいていました。まあ、筑波大学の進化遺伝学研究室で大学院生をしていたときと、それほど変わりがなかったことになります。でも、実家でショウジョウバエを飼うという、多少無茶なことをしてきたおかげで、実験に使う系統を維持するということだけでも、かなりの費用がかかるものであり、学生時代にはただ当たり前のように行ってきたことでさえも、多くのコストがかかっていたことに、改めて気付かされました。ショウジョウバエの餌、恒温器を動かすための電気代、などなど、研究を続けることの大変さを改めて悟るとともに、系統を持ち込むことを許してくださった台湾の先生方には、やはり、感謝以外ありません。