投稿した論文の要旨
前回のDDT抵抗性に関する論文で、殺虫剤抵抗性に関して、私が主に筑波大学で行ってきた実験の結果を、すべて論文として発表することができたと考えていました。しかしながら、これまでに行ってきた研究に対する批判を受けて、最初はA4用紙2、3枚程度の反論レターにまとめようとしていたのですが、その道が絶たれてしまったため、改めて自分が行ってきた一連の研究をまとめ、そのうえで、彼らの批判に対する反論を、ちょっと長めの論文という形で発表することになりました。
私も一応、これまで研究という活動に従事してきたわけですから、私自身、他の研究者が行ってきた研究に対して批判することもあると思いますし、逆に、私の研究に対する批判を受けることもあるだろうと思います。特に、私自身、少なくとも殺虫剤抵抗性の研究については、私の立場や見解は必ずしもみんなからは支持されているわけではないことは自覚しています。結果として、ほとんどの殺虫剤抵抗性研究者は間違っているなどというつもりはサラサラありませんが、少なくとも、私の興味は他の殺虫剤抵抗性の研究者とは違うと思ってきました。それでも、もし批判されることがあったとしても、お互いに議論をすることによって、より良い知見が得られるのであれば、批判されてもいいと思っています。ですが、今回のことに関しては、批判だけしておいて、お互いに議論する機会がなかったことは、とても残念に思いました。
研究を行っている以上、批判されることは仕方がないと思います。でも、できれば、論文などで発表される前に、直接議論してくれれば、こちらの見解もより詳細に提示することができたでしょうし、お互いに、ウィン・ウィンになれたのではないかと思います。また、私自身も、論文の中で、他の研究者の研究に対して批判するときには、著者に直接確認をとるべきであると思いました。まあ、今までそういうこともなかったのですが、やはり、軽はずみに他人の研究にケチはつけない方がいいと思いました。
これらのことを踏まえて、私のこれまでの研究を手短にまとめたうえで、私の研究に対して批判してくれた著者に対する反論を述べた論文をまとめました。以下に、論文の要旨を掲げておきたいと思います。原著論文は英文ですが、日本語に翻訳してあります。
内的自然増加率を個体に対して適用し、それを遺伝子型の間で比較することは誤っているのだろうか?
Takahiro Miyo
Open Journal of Genetics (2018) 8: 1-13.
要旨
現地で最も重要な生態学的要因であると我々が考える、集団が成長する期間のキイロショウジョウバエのある自然集団における殺虫剤抵抗性の遺伝的変異の季節的ダイナミクスに対する洞察を得るために、我々はその集団に含まれている抵抗性因子の一連の遺伝学的解析を行い、抵抗性遺伝子型間において個体に基づいた内的自然増加率を比較した。しかしながら、一部の研究者は、内的自然増加率を個体に対して適用することは考え違いであると議論した。なぜならば、それは集団パラメータであるためであると彼らは主張する。我々は、彼らの批判は間違いであったと考えている。本論文において、私は、我々の研究を手短かに記述し、なぜ我々がこれらの研究を行ったのか、その理由を説明している。
KEYWORDS: キイロショウジョウバエ、殺虫剤抵抗性、内的自然増加率、自然集団