何かをしなければならない(1)
エジンバラから日本に帰国してからの1年間、筑波大学で大学院生だったときにお世話になっていた教授のもとで、大学院時代のテーマであった殺虫剤抵抗性の研究に従事させていただき、その後台湾で非常勤の研究員の仕事を得たものの、早い段階で戦力外通告を受けてしまったこともあり、台湾での研究生活を10ヶ月ほどで切り上げることになってしまったことについては、すでに述べてきたとおりです。台湾から帰国してから、次の仕事先がなかなか見つけられないなかで、どこにも所属せずに実家で、今までまとめていなかった研究の結果を論文としてまとめたり、それまでやってきた研究を改めて振り返ったりしていました。
エジンバラ大学で行った老化の進化に関する研究について振り返りを行っていたときだったと思います。老化の進化に関して、現在進化遺伝学者が特に重要であると考えている理論に、“mutation accumulation theory(突然変異蓄積理論)”と“antagonistic pleiotropy model(アンタゴニスティック・プレイオトロピー・モデル)”があるのですが、いずれの理論にもP. B. メダワーというイギリスの生物学者が大きな役割を果たしています。そのP. B. メダワーの老化の進化のメカニズムに関する2つの論文、“Old age and natural death”および“An Unsolved Problem of Biology”は、原著の論文としてはなかなか手に入りにくいのですが、“The Uniqueness of the Individual”というP. B. メダワーの著書の中に再収録されているため、エジンバラでお世話になっていた先生からこの本をお借りして、エジンバラで読んでいました。しかし日本に戻ってきて、当時の研究を振り返ろうとしたときに、先生からお借りした本を複写したものを、帰国時に持ち帰った荷物の中からなかなか見つけられなかったので、探し出すよりも買ったほうが早いと思い、古本ではありましたが、改めて日本で購入し、このときに再び読み返していました。
私が所有しているのは、1981年に出版されたDover editionですが、現在Amazonでは新しいエディションが手に入るようです。もし興味がございましたら、ご一読ください。 三代