介護付き有料老人ホームG(4)夜勤パート
この介護主任に対する激しい憤りといったような感情的なものだけでなく、それ以上に、高齢者介護における介護職による夜勤という仕事について、改めて考えてみる機会にもなったと思います。先ほども述べたように、入所していた利用者が大けがをしたり、心肺停止になったりして、救急車を要請するというようなことは、私がこの老人ホームで夜勤として勤務していた時には一度もありませんでしたが、それでも利用者が床で倒れているといったようなことがなかったわけではありませんでした。なので、夜勤帯には、入所されている高齢利用者の状態が急変する可能性が常にあったわけであり、それは生死に直結する可能性が絶えずあったわけです。それにもかかわらず、利用者の緊急時における対応について、介護職員という存在はほとんど無防備に近いと感じざるを得ませんでした。医師や看護師であれば、緊急時における処置について学んできているのでしょうが、夜勤専従パートの介護職員となった当時、例えば、利用者が心肺停止となったときの心肺蘇生の手順やAEDを用いた処置について、なにも知識を与えられておらず、その訓練もされていないような状態で、夜勤職員として勤務していたわけです。今現在はどうかわかりませんが、少なくとも当時は、介護職として救急法を学ぶ機会はまったくありませんでしたし、介護施設を運営していた企業にも、そのような救急法の教育・訓練が介護職には必要であるという認識はなかったように思います。
看護職が何人かいる日勤帯であれば、施設の看護職に真っ先に報告することが、緊急時における介護職の任務といっていいと思いますが、看護職がまったくいなくなってしまう夜勤帯では、高齢利用者の状態の急変といったような緊急時にどうしたらいいかということが明確ではないまま、その危険性が絶えずあるなかで介護という仕事をしなければならない緊張感とストレスのことを考えると、介護職の大変さといいますか、あまりにも守られていない存在であることが、改めて身に染みました。離職する介護職が多い理由の一つは、このような過酷な状況にあるにもかかわらず、あまりにも無防備であることによる心理的なストレスによるものも大きいのではないかと思います。多くの高齢利用者と向き合う以上、利用者の死に直面することも多いだろうと思いますが、死に直面しなければならないというストレスに対して、介護職はあまりにも守られていないと感じました。そのようなストレスに対して平気でいられる人間というのは、恐らくそれほど多くはないと思いますが、とくに介護職となっているような人ほど、少ないのではないかと思います。
高齢者介護において、介護職として夜勤をするということが、無防備な、ある意味でとても危険なことであると、改めて感じる機会となりました。介護職として夜勤をするのであれば、心肺蘇生の手順やAEDを使った処置などのような救急法を学び、身につける必要があると思い、その後、まったく個人的にではありますが、日本赤十字社で行われていた救急法の講習を実際に受講することになります。それもこのときの経験がもとになっています。