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介護付き有料老人ホームG(6)社長メールの存在

介護付き有料老人ホームG(6)社長メールの存在 

 

 後日、いつものように出勤すると、施設長からものすごく怒ったような声で、後ろから呼び止められました。施設長は女性の方だったのですが、怒りで声が震えていたように思います。どうして社長メールを出す前に相談してくれなかったのかと、なんだかものすごい剣幕で言われました。私がどう思うかわかっていてやってきたのだろうに、どうしてもこうしてもあるかと内心思いつつ、これで、まあ私が社長に直接メールを送り、介護主任との確執について、社長にいろいろと報告していたことが伝わっていることを悟りました。さらに、その地域におけるいくつかの施設を束ねるような存在であったスーパーバイザーといわれる職員が派遣され、いろいろとヒアリングを受けることになりました。なんだか、大ごとになってしまい、少し戸惑ったのですが、結局のところ、“社長メールなんてしやがって、不届きな奴だ”というメッセージを、暗に受け取ることになったのでした。まあ、もともと辞めるつもりで、その覚悟を決めるために社長メールを送ったようなものでしたし、この有料老人ホームにたいする諦めもついたと思います。

 

社長ダイレクトメールは、徳川時代の目安箱のように、殿様が下々の声を拾い上げようとする、とても良い施策であると思います。ですが、実際のところは、名ばかりであり、ほとんど機能していないように思いました。もともと辞めるつもりでしたから、特になんとも思いませんでしたが、役に立たない名ばかりの社長メールだったら、そんなもの表に出さなければいいのに、と正直思いました。社長自身からは、不利にならないように配慮する旨の返事をいただいていましたが、残念ながら、ヒアリングに来たスーパーバイザーからは、もちろん表面的にはわからないようにですが、しかし露骨に圧力を受けましたし、施設長からも辞める方向で自動的に話が進んでいったように思います。社長を殿様とすれば、施設長は農村の名主のような存在だったのでしょうから、“水呑である平のパート職員が、何してくれてんだ”といったところだったのだろうと思います。

 

結局、この有料老人ホームは、平成237月いっぱいで退職することになりました。平成2211月から働き始めて、9カ月間勤務したことになります。介護職として、はじめて現場で高齢者介護の現実を見せていただきました。まあ、会社とのやりとりや上司である介護主任との摩擦ばかりが目立ってしまって、後味は大変悪いものとなってしまいましたが、それでもこの有料老人ホームに入所されていた利用者の方々からは、とても良くしていただくとともに、とても多くのことを教えていただいたと思います。その一つは、やはり、私が高齢者介護に興味を持つきっかけとなった、P. B. メダワーの警鐘が現実となってしまうのではないかという危機感でした。「つまらない」、「早く死んでしまいたい」といった言葉を、入所されていた高齢利用者の方々から耳にするたびに、高齢者介護の問題は、本当に危機的な状況に向かいつつあるということを改めて感じざるを得ませんでした。


 

 

 

 

 

 

 

数年前にケアマネ試験を受験するときに、これまでに勤務してきた介護事業所での従事日数や就業期間を証明する書類を、それぞれの事業所から発行してもらう必要がありました。これは、介護付き有料老人ホームGに発行してもらった従事日数内訳証明書です。

 

あくまでも、特定の個人や事業所を批判することが私の目的ではなく、現在進行している高齢者介護の現状や将来に対する危惧を明らかにし、議論することが目的なので、その目的にとって必ずしも関わりがない所は、個人情報の保護の観点から修正を入れています。ご理解をいただければ幸いです。  三代