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認知症対応型グループホームA(2)グループホームの比較

認知症対応型グループホームA(2)グループホームの比較

 

 一口にグループホームといっても、それぞれの事業所でそれぞれ特徴があり、私のように3つのグループホームで介護職として勤務してくると、その事業所の特徴だけでなく、これまで勤務してきたグループホームの良かった所、悪かったところなどが、改めて感じられることとなりました。もちろん、そのグループホームを運営している企業や団体などが掲げていた高齢者介護に対する理念のようなものも影響しているのかもしれないのですが、やはり、その施設で働いている職員、特にフロア・リーダーの影響力がとても大きいのではないかと思います。良い、悪いは別にして、そのリーダーがどのようなグループホームにしたいと考えているのかということが、その職場の雰囲気を形作っているように思いました。

 

 この時に勤務したグループホームは、グループホームとしては一番最初に勤務していた都心にあったグループホームほど、利用者の自主性や自律性を重視するということはなかったように思います。しかしそうかと言って、二番目に勤務していた、社長メールを出して顰蹙を買ってしまった有料老人ホームを運営していたのと同じ企業が運営していたグループホームほど、利用者の自主性や自律性を軽視することもなかったと思います。そういった意味で、これまで勤務してきた3つのグループホームの中では、このグループホームは中庸だったと思います。ただ、このグループホームには他のグループホームにはない際立った特徴がありました。それは、フロアで実際に働いている職員のほとんどが女性であり、その多くは主婦だったということす。施設長は男性でしたが、実際にフロアで介護職として勤務していた男性は、夜勤専従だった職員1人を除いては私だけだったと思います。なので、私のように、これまで大学院や研究所のような、あまり人と関わることのなかった世界で活動してきた、いわば常識のない男性は、その多くの職員にとって、我慢ならない存在だったようです。私も、利用者に対応する前に、他の職員から指摘を受けることがたくさんあったと思いますが、なんだか自分の母親から小言を言われているような感じがして、少し煩わしく感じることが多々ありました。正直、とても細かいと思いました。やはり、その多くは家庭の主婦なので、私のような人間は、ズボラであるように見えてしまっていたのではないかと思います。

 

確かに、介護の現場では、多くの女性が活躍されていることは事実だと思いますが、しかし、これまで勤務してきた介護の現場の中で、職員の性比がこれほど偏っていたこともなかったように思います。まあ、本職である家庭の主婦から見れば、特に介護の現場で行われているような食事の準備や清掃、洗濯などのような家事仕事においては、どんな男性も使えないと思われていたと思うので、特に私のような実際に役に立たない介護職員にとっては、まあ、あまり居心地がいい職場ではありませんでした。ただ、高齢の利用者の多くは女性であるということも事実だろうと思います。利用者にとっては、グループホーム内において、いってみれば、嫁と姑のような人間関係が、仕事ができる家庭の主婦を主とする職員との間には出来上がる構図となってしまうので、それはそれで、やっぱり問題も多かったのではなかったかと思います。利用者にとっては、多少使えない男性介護職員の方が、心が休まって良かったのではないでしょうか。まあ、勝手な第三者として、フロアの人間関係を観察してきた正直な感想です。利用者と介護職員を含めれば、145人という人間が密になって生活空間を共有することになるのですから、認知症対応型グループホームなどのような施設を運営するときには、いろいろと考えなければならないこともたくさんあるのかもしれません。