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認知症対応型グループホームA(8)私が理想とするグループホームとは?

認知症対応型グループホームA(8)私が理想とするグループホームとは?

 

 というわけで、私が考える理想的なグループホームとは、まず第一に、しっかりとした介護ができるように、十分な数の職員がフロアに配置されていることだろうと思います。早番から遅番までの日勤帯の間で、少なくとも3人、欲を言えば45人ぐらいが勤務に入ることができれば理想的だと思います。確かに、職員が皆、熟練した介護技術を持っていることが望ましいかもしれませんが、でも、みんなが皆熟練した介護技術を持っていたら面白くないかもしれません。と言いますのは、利用者にしてみれば、なんでもテキパキと仕事をこなせるような人よりも、あまり仕事ができないぐらいの人がいてくれた方が退屈しなくて済むのではないかと思うからです。ちょっと貸してみなさいといって、職員から包丁を取り上げて、大根の桂剥きなんてやりだしてしまったら、利用者にとっても楽しいのではないかと思います。なので、介護職員は、むしろいろいろな人がいていいのではないかと思います。なかには、あまり感じが良くない人もいていいのではないかと思いますし、あまり仕事ができない人がいてもいいのではないかと思います。前にも述べましたが、介護職になりたてで、あまり仕事がわからない人には、フロアで利用者とともに一緒にいてくれるだけで、他の職員ができる仕事の自由度が大幅に増加するわけですし、感じが悪い人がいてくれるおかげで、利用者による他の職員の好感度が相対的に上がることになって、結果として他の職員の仕事が以前よりもやりやすくなるかもしれないわけです。職員のことが気に入らないからといって排除してしまう前に、フロアにおける他の職員の仕事に与える影響を、トータルして考えてみると、どのような職員であってもその人なりの役割というものがあるのではないかと思います。

 

グループホームは、利用者と職員が一緒になって、145人の人間がコミュニティーを作っているわけですから、いろいろな人がいるのはむしろ当たり前だと思います。なので、この時に勤務していたグループホームのように、職員が皆ベテランの主婦で、バリバリ仕事をこなせるような状況というのは、主婦であった多くの職員にとっては働きやすかったかもしれませんが、そのほとんどが女性であった利用者の皆さんにとっては、あまり居心地が良い環境ではなく、あまり面白くないだろうなあと正直思っていました。利用者と職員が一つの世界、社会を共有しているわけで、その中で様々な人間関係が生まれてくるわけです。中には利用者から嫌われる職員が誕生してしまうかもしれませんが、そのような職員がいることで、かえって他の職員の業務が楽になるかもしれないわけで、職員間の連携によって、その嫌われている職員をうまく接触させることで、トータルすれば、フロアの介護の仕事が円滑に回ることもあるのではないかと思います。そこは、リーダーをはじめとする職員たちの腕の見せ所のような気がします。別に、みんなが皆、介護技術に熟練している必要はなく、利用者にしてみれば、あまりできない人がいてくれた方が、楽しいと思うのですが、どうでしょうか。

 

これまでは、介護職員の側について述べてきました。グループホームの利用者についてですが、多くの側面について優先順位があるとは思うものの、訪問介護ヘルパーのところでも述べたように、まず真っ先に気になるのは、独居の認知症高齢者対策だろうと思います。独居の認知症高齢者が、地域社会の中で健康に生活していくことは、現行の介護保険制度のもとでは、ほとんど不可能だろうと思います。なので、私が理想とするグループホームにおいても、このような独居の認知症高齢者に優先して入居してもらうことになるのではないかと思います。そのほかの場合には、独居の場合よりも多少は状況も良いのではないかと思うので(あくまでも、相対的なものですが)、独居の認知症高齢者が優先されるのはやむを得ないのではないでしょうか。職員は多様であった方がいいと述べましたが、利用者については、女性に偏ってしまうのもやむを得ないと思います。利用者の方については、その状況に応じて入居してもらうことになるのだろうと思います。

 

 これまで、経営のことをまったく考えずに好き勝手なことを述べてきました。職員の給料とか、利用者の入居費用などといったことをまったく考慮していないので、突拍子もないこともたくさんあるとは思います。しかし、入ってきたばかりの若い男性職員や、脱サラして介護職員になったような年配の職員が、入ったばかりで辞めていってしまうような状況は、介護の現場にとっても大いにマイナスではないかと思います。介護職員の不足に対する対策として手当を厚くするといったことが考えられているようですが、それだけではなく、多くの介護職員にとって、変えて欲しいと思うようなところはまだまだたくさんあると思います。もう少し介護の現場にも目を向けてくれるようにお願いしたいと思います。