介護支援専門員(7)認知症高齢者とケアマネ
実習指導者の後ろにくっついて、実際に地域で暮らしている高齢利用者のご自宅にお邪魔し、ケアマネである実習指導者と利用者との間で展開されたケアマネジメント過程を拝見させていただきました。3日間というわずかな期間だけでしたが、それでも、地域で暮らしている認知症高齢者の居宅での介護の大変さというものが、ヒシヒシとこちら側にも伝わってきたことが、この実習を通して特に印象に残りました。とりわけ、認知症の利用者ご本人というよりも、在宅で認知症高齢者を介護しているご家族の余裕のなさといいますか、ケアマネである実習指導者に対するご家族の、藁にもすがるような、そんな切実さが伝わってきて、高齢者介護、特に認知症高齢者の在宅での介護の現実を改めて考えることになりました。
例えば、実習初日に伺った、在宅で一人暮らししていた認知症高齢者を、通いで介護されていたご家族の場合、やつれた化粧気のない表情や虚ろな目、ケアマネと話し始めたら、愚痴ともいえないような取り留めのない話が止まらなくなってしまったことなど、在宅での介護のイライラや不満がかなり充満していることが、初めて対面する私でさえも感じられました。そんななかでも、ご家族の話をずっと傾聴していた実習指導者は、やはりベテランなだけあってさすがだと思いましたが、認知症高齢者を介護しているご家族にとっては、藁をもつかむような思いでケアマネをはじめ、介護スタッフを頼りにされていたのだろうと思いました。それでも、地域の中で前向きに生活していこうとされている認知症高齢者とそのご家族の姿を実際に目の当たりにして、頭が下がる思いがしましたし、このような状況をよりよくしていくために、私たちも努力していかなければならないことを改めて感じました。認知症高齢者を地域の中で支えていくとは言っても、実際には、認知症高齢者とそのご家族、ケアマネをはじめとする介護職の尽力に依っているのであって、もしこれで良いと考えてこの状況が放置されてしまうのであれば、いずれこのような介護支援体制も破綻してしまうことになるのだろうと思いました。そのような危機感がみなさんの中にあるかどうかわかりませんが、実際に認知症高齢者を介護していくことの大変さを目の当たりにして、改めて高齢者介護、特に認知症高齢者介護の十分な備えを考えていくことは大切だと思いました。今回の実務研修の中で、このような危機感を間近に感じることができたことは、得難い体験だったのではないかと思います。
介護支援専門員実務研修は、あいだに実習と、課題となっていたケアプランの作成のための1か月間がありましたが、3か月間という長きにわたりました。遅刻や欠席は一切認められていなかったため、とても大変でした。研修の終盤では、私も実際に体調を崩してしまいましたが、それでもフラフラになりながらも、毎日研修に参加し、なんとか全日程を消化することができました。2018(平成30)年3月下旬に介護支援専門員実務研修修了証明書を受け取りましたが、すぐさま介護支援専門員として東京都に登録の申請をしました。介護支援専門員登録通知書と介護支援専門員証は、予定通り、4月の中旬に郵送されてきました。これまで認知症対応型グループホームをはじめとして、様々な介護事業所で介護職として働いてきました。介護支援専門員証を実際に受け取ることができ、介護職としてほとんど向き合うことができなかった認知症高齢者の思いや隠された希望に、ケアマネとして実際にケアプランを作成していく過程で真正面から向きあうことができるのではないかと、この時には考えていました。