小規模多機能型事業所H(6)老老介護
私は、この小規模多機能型居宅介護事業所で、一応ケアマネとして採用してもらったものの、実質的には利用者の入浴介助専門のような立場で働いていましたが、この職場で働いていた職員の中には、70歳を超えるような、いわゆる高齢者が介護職員として何人か働いていました。そのうちの一人は、夜勤専従のパート職員として働いており、高齢であるにも関わらず、夜勤という過酷な状況で働いているのに驚かされることになりました。通いサービスを利用されている要介護者の中には、このような高齢の介護職員よりも若い方も何人かいましたし、正直、肉体的にも精神的にも本当に大丈夫なのかと心配してしまっていましたが、実際のところ、やっぱり大変だったのだろうと思います。どのような事情で勤務されていたのかはわかりませんでしたが、本人たちは元気だったとはいえ、このような高齢にも関わらず、介護という過酷な仕事を続けなければならないこの状況は、一体なんなのだろうかと思わざるを得ませんでした。
現在でも、介護施設では介護職員が不足しており、近い将来にはかなり危機的な職員の不足が叫ばれているように思います。私の知っている方で、訪問介護事業所のサービス提供責任者をやっている方がいて、その方が話してくださったのですが、ヘルパーなどの介護職員を募集しても、まったく応募がないという状況が深刻に続いているそうです。介護施設の中には、職員が足りないからということで、利用者の数を制限せざるを得ないという話を聞いたこともあります。確かに、介護職員が集まらないという現実はあるのだろうとは思いますが、しかしその一方で、施設でも高齢者が高齢者を介護している“老老介護”という状況がすでに現実のものとして出現してしまっていることに、正直驚いてしまいました。高齢の介護職員の方々を前にして、私自身心の中では、「あなた方は、あちらで座ってお茶でも飲んでいてもおかしくはないのですよ」と思っていました。
ただでさえ高齢者を介護するという仕事は大変なのに、それを高齢者に頼らなければならないという現実をみなさんはどうお考えになるでしょうか。在宅においては老老介護という困難な社会的状況があるということもあって、地域で高齢者介護を支えていこうとしているにもかかわらず、その介護の社会化においても、高齢者による要介護者の介護という状況が生み出されているわけです。元気な高齢者が活躍されることはとても喜ばしいことには違いないのですが、この現実は一体なんなのだろうと釈然としない気持ちも正直に言ってあります。このような状況を、国や自治体は把握できているのでしょうか? 結構行き着くところまで来てしまったように私には思われるのですが、みなさんはどう思われるでしょうか?