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高齢者介護の進化遺伝学(7)投稿先の決定

高齢者介護の進化遺伝学(7)投稿先の決定

 

やはり、高齢者介護の進化遺伝学と言っている以上、遺伝学系の雑誌に投稿するほかはないと考えて、これまでに投稿したことがある海外の遺伝学系の雑誌に投稿することにしました。これまでは日本語で書いていましたが、今まで使ったこともない単語に苦労しながら英語での原稿に書き改めることになりました。それでもなんとかアクセプトまでこぎつけることができ、私の最初の高齢者介護の論文ということになりました。以下に要旨の日本語訳を掲げておきたいと思います。

 

なぜ年老いた親を介護するのか? 高齢者介護の進化遺伝学的モデル

 

Takahiro Miyo

Open Journal of Genetics (2017) 7: 20-39.

 

進化学的にみると、年老いた親を介護することは不適応的であるかもしれない。なぜならば、彼らは繁殖を停止してしまっており、それゆえ包括適応度上の利益を期待することができないためである。それではなぜ我々は年老いた親を介護するのだろうか? 本研究では、高齢者介護の進化を、進化遺伝学的モデルを用いて検討した。このモデルでは、家族メンバー間の異なる社会的背景において発現される行動の間にプレイオトロピックな制約が存在すると仮定されている。乳幼児期に親と確固とした関係を確立することは、たとえ将来年老いた親を介護しなければならないとしても選択的に有利であるが、しかし年老いた親の介護は、この行動がより若い世代の繁殖に対して高いコストを課してしまうならば、集団から排除されてしまうかもしれないことが示唆された。集団中の個体数が減少しつつあるにもかかわらず、高齢者介護は容易に選択によって排除されないが、しかし同時に、これは集団サイズの増加率に寄与しないかもしれない。進化遺伝学の観点から、高齢者介護という行動を議論することの意義について強調した。

 

Keywords: 高齢者介護、進化遺伝学的モデル、乳幼児期、プレイオトロピックな制約