より良い高齢者介護観に向けて(4)ある高齢者夫婦にインタビュー
高齢者が、自分が元気なうちから、他者からの介護を必要とする自分自身の老後および自分自身のケアプランをある程度考え、それに慣れ親しんでおくとともに、実際に老後に備えておくことは、いつ起こるかわからない障害や、いつ発症するかわからない認知症のことを考えると、より望ましいことだろうと思います。そして、自分自身で考えたアイデアやケアプランを家族の間でディスカッションし、共有しておくことは、実際に介護を受ける状況になったときのことを考えると、とても重要になるのだろうと思います。しかしながら、健康で元気な状態の人が、他者からの介護を必要としている状況を想像し、他者からの介護が必要になった場合に、どのように生活し、何をしたらいいかといったようなことに関する質問に答えることは、預言者でもない限り困難なことであるのは当然のことであり、極めて自然なことではないかと思います。そこで私は、今回この研究に参加していただいた高齢のご夫婦に、自分の親のこと、そして自分の親を介護していた時のことを思い出してくれるようにお願いしました。なぜならば、彼らの古い記憶は、自分自身の老後および他者によって介護される状況を想像するための手がかりを与えてくれるのではないかと考えたためです。本研究の究極的な目的は、彼ら自身の記憶の助けを借りて、彼ら自身のケアプランを彼ら自身によって作成することです。
私は、ここでの研究において、ある一組の高齢者夫婦に焦点を当てることにしました(以後、A氏およびA夫人と表すことにします)。なぜならば、私はA夫妻の年老いた親を実際に介護した経験があり、それゆえ、彼らには自分の年老いた親を介護するという経験において、経験の量としても多いだけではなく、実際に様々な種類の経験をしてきたことを私自身よく知っていたため、本研究にとって最も適していると考えたためです。加えて、彼らが将来ケアサポートを必要とするようになった場合に、私が彼らのケアプランを作成することになると考えられていましたので、継続的に彼らの経過を観察することができるため、彼らのケアマネジメントの連続性という観点からも適切なのではないかと考えました。
(続く)