より良い高齢者介護観に向けて(5)ある高齢者夫婦にインタビュー
ここで、本研究に参加していただいた高齢者ご夫婦について、簡単に説明しておきたいと思います。A氏は、本研究に参加していただいた当時、80歳代前半でした。彼の父親は、A氏が仕事で忙しかったおよそ45年前に病院で息を引き取ることになりました。彼の母親は、認知症となり、A夫妻が彼女の介護をしながら数年ののちに、高齢者介護施設で息を引き取りました。
A夫人は、本研究に参加していただいた当時、70歳代後半でした。彼女の父親は、脳腫瘍の手術後、意識が不明となり、数年間病院で寝たきりの状態となってしまいました。およそ40年前に病院で亡くなっています。彼女の母親は、A夫人の父親が亡くなった後長い間一人暮らしをしていましたが、日常生活を送ることが困難になったことから、病院に入院(社会的入院)することになりました。およそ20年前に病院で亡くなられています。
A夫妻に本研究に参加していただいた当時、A夫妻はともに日本の介護保険制度のもとで第一号被保険者(65歳以上の高齢者)に属していましたが、しかし彼らはいかなるケアサポートも必要としておらず、自分自身で日常の生活活動を行っていました。彼らの個人情報を厳密に秘匿し、個人が特定されないように厳重に注意するという条件の下で、親切にも本研究に参加していただけることに同意していただきました。
インタビューに先立って、2018年2月初旬に、この研究の目的と概要を手短に説明した文書、および彼らの昔を手短に調査する質問紙をA夫妻に手渡しました。これは、彼らが昔を思い出し、それらの詳細なイメージを準備するためには数日必要とするかもしれないと考えたためです。数日後、彼らがそれぞれの質問についての答えを準備できるように、インタビューで尋ねることになっている項目を記述した文書を、あらかじめ手渡しておくことにしました。
インタビュー当日には、前もって彼らに手渡しておいた文書に記述されていた質問項目に従って、半構造化インタビューを介してデータを生成しました。しかしながら、私はまた同時に、彼らができるだけ快適に、かつ自由に話すことができるように配慮しました。許可を得て、インタビューの中で語られた会話はすべてパーソナル・コンピューターによってデジタル的に記録し、逐語録を作成しました。インタビューは、A夫人については2018年2月6日、A氏については2018年2月11日に行いました。それぞれのインタビューは、およそ1時間を目安に行いました。
私は、本研究を行うにあたって、以下に列記する日本の法律の条項に従い、登録介護支援専門員および介護福祉士として必要な倫理的配慮を行いました。まず第一に、介護保険法第69条の34(介護支援専門員の義務)、第69条の36(信用失墜行為の禁止)、第69条の37(秘密保持義務)、そして社会福祉士及び介護福祉士法第45条(信用失墜行為の禁止)、第46条(秘密保持義務)、第47条の2(資質向上の責務)です。これらの法律に基づき、私は2人の研究参加者それぞれに対して、文書および口頭で研究の説明を行い、それぞれの参加者から署名された研究参加の同意書をいただいています。研究参加の同意書には、この研究の目的と手短な記述、研究手順、中止する権利、秘密保持義務が含まれていました。特に、インタビューの間に参加者によって語られた個人情報を含む一部の内容は、研究参加者が特定されないように秘匿されています。