英語の勉強 24ー英語力向上のためにおこなってきたこと 15
母国語で書かれていない書物を理解していくという作業は、やっぱり時間がかかる仕事だと思いますし、苦労もそれだけ多くなることは、まあ当然予想されることだと思います。今日であれば、例えば英語であれば、とても詳しい英和辞典や和英辞典も揃っていますし、私が留学していた頃はそれほどでもなかったと思いますが、今日ではインターネットも日常の中で当然のように使われているので、わからないことがあっても、比較的容易に調べ上げることができます。なので、私が英語の本を読む上でおこなってきた苦労など、たかが知れているのですが、辞書類やインターネットが完備されていなかった江戸時代であったならば、その苦労はいかばかりだっただろうかと思います。
2008年に台湾から帰国してからだったと思うのですが、なぜ知ることになったのかもうその経緯は覚えていないのですが、吉村昭氏が書かれた「冬の鷹」という小説を読んだことがありました。今はだれかに貸してしまっていて手元にはないのですが(良書なので読ませたくて、多分甥に貸出中だと思います)、これは、江戸時代に翻訳書「解体新書」を発表した前野良沢と杉田玄白の対照的な生き様を描いた小説で、研究職を見つけられずに台湾から帰国して鬱々とした日々を過ごしていた自分には、とても胸にしみる内容の小説でした。世の人々からは評価を受けることはなくとも、孤高を貫いて、一学徒として自分の生涯を完結させようとする前野良沢の姿に、私自身とても感銘を受けたと思います。まあ、私たち日本人には、前野良沢や杉田玄白のような日本人の大先輩がいるのですから、英語で書かれた書物を、辞書と首っ引きで、格闘するかのように読みすすめていくという勉強方法は、むしろ馴染みがあると言いますか、日本人の外国語を習得する上での一つのスタイルとして、しっかりと確立された方法なのではないかと思います。私のこれまでの英語の勉強というのは、やっぱり、英語で書かれた本や論文を読んで理解していくということが、主であったと思います。まあ少し大げさにいえば、本や論文の内容を理解することが主であって、英語そのものの習得というのは、やっぱりそのための手段と言いますか、私にとっては従の部分に当たっていたのだろうと思います。まあ、いずれにしても、前野良沢や杉田玄白のような大先輩がいて、私も日本人であることに、改めて誇り感じてきました。