翻訳作業 後期第5日目

翻訳作業 後期第5日目

 

私が高齢者介護の進化遺伝学について研究していく中で、もちろんそのベースにあるのは、これまでに勉強し研究してきた殺虫剤抵抗性に関する集団遺伝学や進化遺伝学だったわけですが、高齢者介護という人間の自然本性にも関わる行動や現象を理解していくためには、血縁選択や利他行動の遺伝学を勉強していかなければなりませんでした。利他行動の進化遺伝学については、源を探していけばダーウィンにも連なるような伝統的なテーマだったようですが、その利他的な行動に理論的な遺伝学的裏付けが与えられたのは、1960年代のことです。Hamiltonの1963、64年の論文に始まり、その後の主だった論文を興味に任せて勉強していく中で、イギリスでお世話になったProfessor Brian Charlesworth教授の理論的な論文に大いに影響されましたが、実際に高齢者介護の現場で、どのように研究してきた知見を活かしていけるのか、理論として学んできたことをどのように高齢者介護の現場で役立てることができるのかということについても勉強していきました。そこで出会った論文の著者の一人に、ニューヨークで活躍されていたD. S. Wilson博士がいます。私は本文の中で以下のように述べています。

 

D. S. Wilson博士のNeighborhood Project

アメリカ合衆国のニューヨーク州にビンガムトンという街があります。この街にはニューヨーク州立大学ビンガムトン校があり、そこにD. S. Wilson博士という研究者がいます。D. S. Wilson博士はこれまで、主にグループ選択理論(複数レベル選択理論)を用いて利他行動の進化を研究されてきました。最近では、生物学や進化学から得られた知見を、社会、教育、宗教や文化といった人間の様々な側面の理解に役立てていき、自分たちが住んでいる街や地域、社会の改善に活かしていこうという取り組みをされています。これらのプロジェクトは、『The Neighborhood Project』(Wilson, 2011)や『Does altruism exist?』(Wilson, 2015)にまとめられています。ご家族の話や身の回りの身近な話題をふんだんに取り入れながら、一般の読者にもとてもわかりやすく解説してくださっており、とても興味深く読むことができるものでした。私も多くのことを学ばせてもらうことができ、ぜひ皆さんも一読されることをお勧めいたします。(本文 p. 121)

 

私自身は、イギリス・エジンバラ大学のProfessor Brian Charlesworth教授のもとで、進化遺伝学を学んできましたし、教授の利他行動の進化遺伝学的モデルを勉強してきたので、基本的には個体選択の延長線上で高齢者介護の進化遺伝学を考えてきましたが、私自身は必ずしもグループ選択を否定するものではありません。論文を読まさせていただいてとても惹きつけられましたし、今後ユートピアのような世界を模索していく中で、社会やコミュニティーの進化を考えていかなければならないと思いますので、その時にはもっと勉強していかなければならない分野なのだろうと認識しています。ということで、以下のような英訳が得られました。

 

Dr. D. S. Wilson’s Neighborhood Project

There is a city called Binghamton in the state of New York in the United States. This city is home to the State University of New York at Binghamton, where a researcher named Dr. D. S. Wilson conducts his research. Dr. D. S. Wilson has conducted his research on the evolution of altruistic behavior mainly using group selection theory (multilevel selection theory). Recently, using findings from biology and evolution, efforts have been made to better understand various aspects of human beings, such as society, education, religion, and culture. These endeavors also aim to improve the cities, regions, and societies in which we live. Dr. D. S. Wilson summarizes these projects in his books, “The Neighborhood Project” (2011) and “Does Altruism Exist?” (2015). These books are very interesting to read, as they incorporate plenty of family stories and familiar topics. The explanations are presented in a way that is easy to understand, even for general readers. I have learned a lot from these books and highly recommend them to everyone.

 

世の中は広いなあと思います。やっぱり、アメリカはすごいなあと心の底から思いました。やっぱり、この多様性と言いますか、いろいろなことを考えることができる空気感と言いますか、風土と言いますか、これはやっぱり日本にはないと思います。残念ですが、まだまだ海外から学ばなければならないと思います。 三代