翻訳作業 後期第6日目

翻訳作業 後期第6日目

 

私はこれまで高齢者介護の進化遺伝学を研究してきましたが、その時に誰かと議論することはほとんどありませんでした。まあ、際どいテーマであることは百も承知していましたし、せいぜい誤解されるのがオチだと思ってきたので、まあわかってくれる人にわかってもらえればそれでいいと思ってきました。それでも一応、それなりの結果にまとめることができた場合には、失礼を顧みず、本や学術雑誌の論文で目にする著名な先生方にコンタクトを取らせていただき、論文に対するご批判やコメントを求めることが何度かありました。全く面識もないわけですから、こちらからの不躾なお願いに対して応えてくれる義理はまったくないと思いますので、まあダメでもともとという気持ちでメールを送らせていただいてきました。にもかかわらず、私からのお願いに対して、ご返事をいただけることもたびたびありましたが、さらにこちらからのお願いに対してご丁寧な回答をいただけることもありました。相手は著名な先生方なわけですから、こちらとしても感激なわけですが、ダメでもともとという気持ちで送らせていただいているので、実際にご返事をいただけると本当に感謝の気持ちでいっぱいになります。実際、イギリスでお世話になったエジンバラ大学のProfessor Brian Charlesworth教授は、それまでまったく面識がなかったにも関わらず、こちらからのメールに対してご親切なご返事をいただきましたし、その後ポスドクとして3年以上にもわたって、教授のラボに置いていただくことができたわけで、本当に人と人との繋がりといいますか、縁の不思議のようなものを感じます。ただ、このようなことは、やはり例外的なこと、有り難いことなのだろうと思います。見ず知らずのものがメールを送っても、無視されてしまうのが普通なのだろうと思います。進化生物学で得られた知見を活かして街やコミュニティーを改善していこうとされていたDr. D. S. Wilson先生に、私の最初の論文が発表されたときにコメントをいただきたくメールを送らせていただいたのですが、残念ながらレスポンスをいただくことはできませんでした。そのことについて記述しているのですが、私は本文の中で以下のように記述しています。

 

W. D. Hamilton(1963, 1964a, b)に始まる利他行動の進化に関する理論的な研究の流れを振り返ったときに、グループ選択の考え方は、必ずしも賛同者が多かったというわけではなかったでしょうし、これまでいろいろと困難があったことは容易に想像することができます。しかしそれでも、とてもユニークな視点を持って、これまでご自身の世界を築かれてきた研究者として、私自身とても参考にさせていただいています。私が初めて高齢者介護の論文(Miyo, 2017)を発表したときに、D. S. Wilson博士にその論文のpdfを添付したeメールを送り、私の論文に対するコメントや、できれば日本の高齢者介護の問題についてご意見やご示唆をいただければと思ったのですが、ご返事やご批判をいただくことはできませんでした。見ず知らずの者のメールをむやみに開かないのは研究者としては常識的なことなのかもしれませんが、まったく相手にしていただけずとても残念でした。私自身もっと精進しなさいと言うことなのだろうと思います。それ以上に、日本の高齢者介護の問題についてご意見を伺うことができなかったことは、日本にとっても、日本人にとっても、とても残念なことではなかったかと思います。今後、機会があったら、ぜひご意見を伺ってみたいと思います。(本文 p. 121〜122)

 

今回は、残念ながらDr. D. S. Wilson先生からコメントをいただくことができませんでしたが、私自身さらに精進していかなければならないと思いました。ただ、先生から日本の現状や高齢者介護の今後についてお話を伺うことができなかったことは、日本にとって、日本人にとってとても残念なことだったと思います。今後、機会があったら、ぜひ先生からご意見を伺うことができればと思います。というわけで、以下のような英訳を得ました。

 

Reflecting on the trajectory of theoretical research on the evolution of altruistic behavior, beginning with W. D. Hamilton (1963, 1964a, b), it seems to me that the concept of group selection did not necessarily garner widespread support. It can be easily imagined that numerous challenges were faced along the way. Nevertheless, as a researcher who has built his own world with a very unique perspective, I myself refer to his attitude toward the world and his ways of research. When I published my first paper on elderly care (Miyo, 2017), I emailed Dr. D. S. Wilson a PDF of the paper, seeking his comments on both the paper itself and, if possible, the issue of elderly care in Japan. Despite my hopes to receive his opinions and suggestions, unfortunately, I did not receive any replies or criticisms from him. While it may be common sense for researchers not to open emails from strangers, I felt disappointed that I could not establish any interaction with him. This experience made me feel that I need to put more effort into self-improvement. Beyond that, I consider it was a significant missed opportunity for both Japan and its people that we could not benefit from his insights on the matter of elderly care in our country. If I have a chance in the future, I would strongly like to hear his opinions. 

 

お忙しいにもかかわらず、高名な先生方から、ご返事をいただけただけでなく、ご親切な回答までいただくことができると、本当に感動してしまいます。有り難いことだと思います。私も一人で研究してはいますが、決して一人ではないと思いますし、理解してくれる人は必ずいると信じて、これからも研究していこうと思います。  三代