翻訳作業 後期第7日目

翻訳作業 後期7日目

 

今日は、この節の最後の段落です。私が高齢者介護の進化遺伝学を研究してきて思ったことは、年老いた親を介護するという行動が、進化遺伝学という観点から見てみると、とても合理的な、理にかなった行動であるということです。一度合理的であるという判断ができてしまうと、高齢者介護というとても大変な任務に対する印象が、それまでに持っていたものとはまったく変わってしまいました。世界が変わったというか、世の中に対する見方が変わったというか、自分でも驚いてしまうほどだったのですが、それまでに持っていた高齢者介護に対する見方がまったく変わってしまいました。ただ大変だとか、辛いということだけではなく、納得できるものというか、人間として、生物として、長い長い進化の過程で獲得してきた理にかなったものなのだという、そういった受け入れることができるような、不思議な感覚でした。勉強し研究することによって、ある行動、現象の意味することが、それまでとはまったく違うものになりました。この合理的であるということを、私は自分の研究で用いたモデルやこれまでの私自身の経験などを通して理解してきたのだと思います。ですから、実際に進化遺伝学を研究されてきた、私の指導教官であった大学院時代の教授や、イギリスのエジンバラ大学でお世話になった進化遺伝学の教授たちが、自分自身の介護についてどのように認識し、どのような老後を送りたいと考えているのか、とても興味があります。自分自身が培ってきた進化遺伝学の観点から見て、自分自身の介護についてどのような理解を持っているのか、長い人類の進化という観点から見て自分自身の介護に対してどのような位置づけがなされるものなのか、一度じっくりとお話を伺ってみたいなあと思ってきました。私は本文の中で以下のように記述しています。

 

有限責任事業組合進化・高齢集団研究社を立ち上げた今、私を教育し育ててくださった筑波大学名誉教授の小熊讓先生や、エジンバラ大学のBrian Charlesworth教授をはじめとする進化遺伝学の専門家が、高齢者介護の問題をどのように考えているのか、ぜひ伺ってみたいところです。先生方が培われてきた専門知識に照らして、ご自身の介護の問題についてどう考えているのか、これから機会をみつけながら伺うことができればと思います。(本文 p. 122)

 

『論語』の中に、「朝に道をきかば夕べに死すとも可なり」という有名な句がありますが、一度納得してしまうと、世の中に対する見方がガラッと変わってしまうといいますか、「ああ、そういうことだったのか」と受け入れることができるのだろうと思います。高齢者の介護で、悲しい事件がたびたび報道されることがありますが、そのようなことがなくなればいいなあと思います。高齢者介護に対する一通りではない、いろいろな見方を提示できればと思い、有限責任事業組合「進化・高齢集団研究社」を作りました。そのようなことで、以下のような英訳が得られました。

 

Now that I have founded the Limited Liability Partnership, the "Association for Evolutionary Research on Aging Populations," I have a hope to ask questions about the issue of elderly care to experts in evolutionary genetics. This includes seeking insights from Professor Emeritus Yuzuru Oguma of the University of Tsukuba and Professor Brian Charlesworth of the University of Edinburgh, both of whom have been instrumental in my education and personal development. I would like to seize an opportunity to inquire with the professors about what they think about their own nursing care issues in light of the specialized knowledge they have cultivated.

 

ただ、私たちがこれまでに得てきたこの理解を、他の人々に押し付けるつもりはまったくありません。それは違うと思います。やってはいけないことだと思っています。やはりこういった理解や感情は、上から押し付けるものでは決してなく、自らの理解や経験を通して得られるものだと思うからです。私が有限責任事業組合を立ち上げたのは、あくまでも多様な見方の一つをみなさまの前に提示することで、我々が選択することができる選択肢の幅を広げたいがためであり、とかく同調圧力やお上による一方的な措置、一方的な政策など、他の考え方を認めない同質化の流れに抗いたいと考えているためです。そういった意味で、アメリカのDr. D. S. Wilson先生が行われているような研究は、日本ではまず不可能だろうと思いますし、私もとても参考にさせていただいているわけです。これと同じ延長線上で、私はみんなと一緒に同じことを研究したいとはこれっぽっちも思ってはおりません。もし一緒に研究するとしても、それぞれが別々の研究を行い、それを持ち寄って、さらに良いものが作れればと思います。ということで、私は一人で研究を行ってはいますが、決して一人ではなく、またみんなと同じことをやっているわけでもありません。  三代