翻訳作業 後期第15日目
本日は、次の節に進みます。最初の段落です。日本の認知症研究の第一人者として活躍されてきた長谷川和夫博士(故人)が認知症になってしまい、実際に認知症になったことでわかったことがいろいろとあったということを著書の中で述べられていたのですが、それを読んだ時に思ったことについて記述しています。私は本文の中で以下のように述べています。
日本の認知症研究の第一人者、長谷川和夫博士
介護福祉士やケアマネジャーになるには、介護職などとしての実務経験が必要ですが、それだけでなく介護に関することや他の分野の専門的な知識を問われる学科試験にパスする必要があります。学科試験をパスしてきた職員の方ならば、ほとんどの人は、“長谷川式簡易知能評価スケール”のことを勉強されてきたのではないかと思います。私も当然、試験勉強の中で覚えたことがあります。その長谷川式スケールを作成した、日本における認知症研究の第一人者である長谷川和夫博士が認知症になってしまったそうです。日本や世界の認知症研究をけん引されてきた長谷川博士ですが、認知症になってからわかったことがいろいろとあり、『ボクはやっと認知症のことがわかった』(長谷川・猪熊, 2020)という著書を最近出版されています。医師として認知症の患者さんを診察していたときに、デイサービスに行くように患者に勧めたりしていたそうですが、実際に自分が認知症になってみると、デイサービスに行きたくないと思うことも時々あると著書の中で述べられていました。この長谷川和夫博士の言葉を目にした時に、私が介護職として勤務してきたなかで関わらせていただいた高齢利用者の方々の姿を思わずにはいられませんでした。(本文 p. 125)
高齢者介護の現場で介護職として働いてきて、医療と介護のあり方について、いろいろと目の当たりにし、いろいろと考えさせられることがありました。認知症になってから認知症のことがわかったという長谷川博士の言葉は、日本の認知症研究の第一人者だっただけに、とても重たいものがあると思います。ということで、以下のような英訳を得ました。
Foremost Dementia Research Authority in Japan: Dr. Kazuo Hasegawa
To attain certification as a certified care worker or certified care manager, we need practical experience, such as working at care facilities, but we also need to pass the academic examinations that examine our specialized knowledge in caregiving and other fields. I believe that a majority of the staff members who have successfully passed the written examinations have studied "Hasegawa's Dementia Scale." Naturally, I have also committed this to memory while preparing for the exams. It has been reported that Dr. Kazuo Hasegawa, the creator of Hasegawa's scale and a foremost authority in dementia research in Japan, has been diagnosed with dementia. Dr. Hasegawa, who has been a leader in dementia research both in Japan and internationally, gained many valuable insights since developing dementia. Recently, he authored a book titled "Boku ha yatto ninchishouno kotoga wakatta" (meaning “I finally understand what dementia is” in Japanese) (Hasegawa and Inokuma, 2020). When examining patients with dementia as a doctor, he often encouraged them to go to day care services. However, in his book, he candidly admits that he occasionally feels disinclined to attend day care services, now that he has personally suffered from dementia and needs to go to day care services. After reading these words by Dr. Kazuo Hasegawa, I couldn't help but reflect on the elderly individuals I have cared for during my career as a care worker.
医師免許のない私たちには、医師や看護師の判断に逆らって、自分たちの判断で年老いた親の治療を行なったり、介護を行なったりすることは、グレーな場合もあるにせよ、一般に法律で禁じられている場合が多いと思います。ですから、医師の診断が出てしまった場合、そこから先は医療側でどんどんとレールが敷かれてしまって、もう後戻りはできないような印象があります。認知症になってはじめて認知症のことがわかったという日本の認知症研究の第一人者であった長谷川和夫博士のお言葉は、逆に言えば、認知症ではない医師や私たち介護者には認知症の人の状態について、すべてわかっているわけでは決してなく、わからないこともあるわけで、特に認知症の高齢者の気持ちについては、顧みられることがほとんどないと言っているのではないかと思います。著書に書かれている長谷川博士のお言葉を目にして、医療と介護のあり方について大いに考えさせられました。皆様からのご意見をぜひ伺ってみたいと思っています。 三代